通信24【開かずの間】

石巻リバーサイドホテルの窓から見下ろす北上川は凍っていた。
うぅっ、さ、さぶい!
この時期の訪販は辛い。なぜなら、大方の家の床の間のある座敷には、暖房が入っていないからだ。床の間のある座敷は「開かずの間」、訪ねる人もいないから物置きと化す。
その開かずの間には、新築祝いに親戚から贈られた山水の掛け軸が、ぽつんと淋しそうに掛けられている。 年中どころか新築以来、十数年掛けっぱなし、埃が積もっている。


昔、男は皆、60才を過ぎると長男に家督を譲り隠居して、町や村の役をしたりして、ご隠居さんを訪ねてくる大勢の人達を、床の間を背にして迎えたものだ。
「家は3間続き、ふすまを取り払えば60人の寄り合いができた」と自慢の日本建築も、今では婚礼はホテル、葬式、法事はメモリアルホール。日本の伝統文化の崩れ落ちる音がする。


どこの家も、3世代同居は当たり前で、じいちゃんばあちゃんが毎朝、仏壇に手を合わせる姿を見て、孫達が面白がって付いていき、知らずうちに習わぬ経を覚えたものだ。


床の間には、仏壇が付きもの。信仰心はなくとも先祖を大切にするのが、「和人」のこころ。
家の顔ともいうべき、お客様を、おもてなしする大切な、お座敷。


床の間が泣いてますよ!! 石巻のヒト!!!


ここ、石巻も何年ぶりかの雪と寒さだという。
「研磨石さん寒いときの訪販は止めるべ」との呉服屋さんの力無い言葉に、
ぅんだすな、ムリしねぇほうが良がす」と研磨石。
飲みさ、行くべ」 「行ぐ、行ぐ
で、その夜は4軒の飲み屋を、はしご。ホテルへたどり着いたのが3時をとおに過ぎていた。
(これ、最終日の訪販を残して2日目の夜のお話し)
翌夕、「6月頃にもう一度お願いするス」という決意(リベンジ)の申し出に、「心得た」と、石巻を後にした。

その後、20年程前に担当した懐かしい岩手、宮城の呉服屋さんをまわり、長かった東北の旅を、前沢の呉服屋さんで3月の開催を決めて、終えた。
そして、帰途、渋谷文化村の「良寛さん」展を見にいき、9日ぶりに帰洛した。と思ったらもう、明日から四国、観音寺へ旅にでる。


        紀末、紀初 なにやらどうも 忙しい   研磨石 磊翁


2001(H13)/ 1/31(水) 10年ぶりに仕事モードにはまっている? 研磨石

【訪販道中膝栗毛7 石巻】中華楼で魚(鯖?)のだしのラーメンを食す。夕食は、深谷からし巻、酢牡蛎、どんこ汁。牛舌の話しは、次の機会に。