*p1*[通 信 【研磨石通信】]通信23【良寛その後】

なにげに床の間の掛け物を見やった客 「ホ、ホウ! 良寛ですな
ちょこっと自慢げに主人       「ムムッ、分かりましたか!」
客 「して、どちらの軸屋でお求めに?」
主人「いや、それがな、実は近くの呉服屋で」
客 「なるほど、表具もまた素晴らしい。この裂地は西陣織ですな」
主人「名物裂と申しましてな、なんでも呉服屋だからこそできる表具だそうで」
客 「ええもん見させてもらいました」
  「帰ったら、うちの出入りの呉服屋に尋ねてみまひょ」


・・・・・そして、数日後
客 「いや実は、うちの呉服屋では扱ってないそうで」
主人「そういえば、うちの呉服屋が『この町ではわたしとこだけです』と、
   そうそう、『日本橋の四越の美術画廊にも置いてません』とも、
   偉そうに言うてましたわ」
客 (・・うちも呉服屋変えなアカンな、・・・恥かかされてしもたがな・・・
   なんでもその呉服屋は「和具屋」っちゅうて、最近よう売れとるらしい・・
    うちにも来てくれるやろか・・・・・・・・)
主人(・・あの客に売ったらアカンて言うといたろ・・・・)


このやり取りの中の掛け軸は、良寛和尚の真筆ではありません。
(有)円相ミュージアムでは、骨董品は扱っておりません。
弊社、お手製の企画、新シリーズ【良寛漢詩を軸にする】(詳細、通信13)を、お求めいただいたお客様が、その後、こういった会話をなさるであろう、という期待を込めた想像図であります。


「売れる」ものを創る

むかし、売れない呉服問屋の出張員だったころ、よく思ったものである。末端の営業員が、売ることに苦しむような商品を扱っているようでは先は暗いと。
(父達の世代、それは戦後の焼け跡、無からどんな職業についてもパイが広がる、そんなまさに「考えなくても売れる」時代に居合わせた父達は幸運であった。)


それでも、当時は、売上の出来ないのは自分の能力不足だからだと、研磨石は必死に頑張っていた、耐えていた、嘆いていた。仕事が好きだと信じてさえいた。今の3倍? いや、5倍は働いていたと思う。今思えば大きな勘違いをしていたようです。


☆世の経営者や社長、部下のいる上司の方々に問う!(末端の営業員の立場から)
自分(社長)でも「売れない」物を、他人(社員)に「売れ」というのは酷である。自分にしか「売れない」物を他人に「売れ」というのは、もっと酷である。
(売る力のある人あるいは、いばりたがりやの社長や上司の自己顕示にすぎない)


誰にでも「売れる」が、誰にでも扱えない(真似されない)物。まずそこには、商品ありき、なのである。
放っておいても、「売れる」ものを創る、あるいは引っ張って来るのが、良き、経営者(社長)の務めである。


「どうやって売ろうか」とかいう会議をやたら、したり、「努力が足りん」とか叱責する、上司や経営者の下に働く程不幸なことはない。
行きつく先は、「売れないのは自分の努力不足だ」、「この仕事、俺に向いてへん」となる。


世の中で一番、愛すべき自分自身を、責めてはあきまへん(かつての研磨石がそうやった)

すべては、売れない(時代遅れ?)ものを扱ってる、そのことに気付かずにいる、経営者が
悪いんやから。


当時(8年前)、気づいていたらな・・・そんなこんなを、旅先で、ふと思うのでありました。

「いやはや、また話が脱線してしもたがな。」 高知はよっぽど、暇やったと見えますな、
正月早々これではあきまへんがな。
 「そうそう、良寛のことどした。本年は、良寛没後170年、全国的に関連イベントもようけしやはります!全国の呉服屋さん、うちの良寛も、よろしゅうお頼もうします!!」

「研磨石は創りまくりまっせ!!ほして、それ持って死ぬまで旅(訪問販売)し続けます」と、年頭に当たり、決意をまくし立てる研磨石であった。


           2001(H13)/ 1/12(金) 高知にて  らしくない研磨石でした


【訪販道中膝栗毛6】

売れずとも 花は咲き 季節はうつろい やがて散る 喰わなきゃソンソン
                               字余り 〜研磨石〜

■売れず! 
こうなりゃ、やけ喰い? 土佐料理「司」本店にて、鯨の刺身・うま煮・ウネス(皮)の小鍋、サエズリ(鯨の舌を酢味噌で)、のれそれ(あなごの稚魚)、どろめ(いわし類の稚魚、ちりめんじゃこの生)、四万十川の青さのりの天麩羅、クエの刺身、鰹のタタキ・ちちこ(心臓)・・・・・
ひとり寂しく、酒池肉林とはいかなかったが、食いも食ったり4日間、土佐の旅。
■紹介者のTさん、ゴメンネ! 売れなくて。夕食代金、呉服屋さんには2千円×4日分しか請求してませんので、念のため。もちろん交通費・宿泊代も頂戴しました。美食追加分は身銭を切りました。
■次の旅は、仙台、石巻と連続2カ所。サエズリ(鯨の舌)の次は牛舌だーっ。「おい、おい」