通信48【訪販道中膝栗毛、南部川村】

渓梅一朶香 (けいばいいちだかんばし)ですな!」
「あ、いやこれだけ沢山咲いてると、百花為誰開(ひゃっかたがためにひらく)ですかな」


ちゃーんと梅干しの産地に来る時には“梅に鴬”の画賛を忘れずに持参している。
訪販に向かう車内で、後席に置いた風呂敷包みの中にある墨蹟の商品説明を、こうやって世間話に織り込むところなんぞは、研磨石もなかなかのものである。
こういうのを、目に見えぬ販売努力という。
四方の山は、見渡す限りの梅林? というよりは梅の山また山、梅だらけ。満開に近い梅林の山肌を縫うように走る気分は爽快である。
窓を開けると、まだ2月初めの冷たい空気とともに微かな梅の香が車内に飛び込んでくる。
この壮大で、異様な風景に、「“枯れ木に花が咲く”とは、このことを云うのかもしれませんな」と、話しは尽きぬ。
「お得意先は梅農家が多い」
とおっしゃる、一回り年下の店舗を持たぬこの呉服屋さん、どの家を訪問しても、みなさん温かく迎えてくださる。
4日間同行して、こ奴、若いのにただ者ではないな!という気配を感じた。

これでも近江商人の端くれの研磨石であるが、自分にその素養が無いと悟った今、ホンモノの商人が「売りたい」と言ってくれる、“モノ造り”に命を懸けているのだが、こうやって老体に鞭打って全国各地へ訪販に出かけるその理由は、
【ホンモノの行商人を見つける】旅でもあるからだ。
研磨石より年上のホンモノには、かつて幾度も出会うことがあった。しかし、年下は稀である。
こういう青年がいるということは、この業界もまだまだ捨てたもんじゃないなと、つい、嬉しくなってしまうのである。
安易な企画販売、悪魔の集客術に骨抜きにされてしまった全国の呉服屋さんへ!
店舗に頼らぬ、ふだんからの地道な訪問活動、信頼関係づくりこそ急務ですぞ!!
先週の訪販地、南高梅の産地、南部川(みなべがわ)村にて、記。


2003/ 2/17 ただ今は鳥取市、用瀬(もちがせ)、智頭(ちず)、方面訪販中の研磨石
【追記】
南高梅(なんこううめ)」命名の由来
 地元、南部(みなべ)高校【通称なんこう】の先生が品種改良に成功したのでこの名前が付けられたと言う。

【雑感】
 この旅から帰ったら習字を習いに行こうと考えてます。
「商品を売る、自分を売る」だけの人生から、最近は「自分の人生をどう商うか」に、歳とともに視点が変わって来たようです。
が、しかし売れないことには人生を楽しむことはできない。 難しいものです。

例年1月、2月は暇なのに、正月明けから、狂言ワークショップ、長崎、和歌山、鳥取と休む間もなく動いております。

【予告】
炭焼きフォーラムに引き続き、第2弾“シイタケ菌打ちパーティーを3月末頃に、バサラ村にて予定しております。